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株式会社フロンテア

肥料のキホンがよくわかる講座

第5回 わが国の土壌からして化学肥料はうまく使いたい

 前回は有機質肥料について学びました。今回はもうひとつの肥料、無機肥料となる科学肥料をとりあげます。この科学肥料、最近はとかく悪者扱いされがちですが、日本の土壌を考えた場合、化学肥料はなくてはならないものです。

化学肥料は使いやすく品質が安定している

 無機肥料とは有機物質を含んでいない肥料のことで、多くは天然の鉱石を化学的に精製して生産されます。このように化学処理を経て作った無機肥料を特に化学肥料と呼んでいます。
 無機肥料の優れた点は、特定の成分のみを含んだ肥料(単肥)があること。有機質肥料のように悪臭が少ないこと。微生物の発生が少ないので腐敗のおそれがないこと。効果が表れるのが速いものが多いこと、などがあげられるでしょう。
 近年、有機栽培への関心から化学肥料を目の敵にする向きも一部に見られますが、これは大きな過ちです。日本の土壌の多くはリン酸が固定されやすく、また窒素も豊かではありません。どちらかと言うと貧栄養の土地が多いのです。
 各種の有機質肥料や堆肥を充分に与えて地力や保肥力を高めることはもちろんですが、有機質肥料では間に合わない多量必須元素などは化学肥料で補わなければ植物を充分に成長させることはできません
 また高温多湿な日本の夏の気候条件下では急激な分解による害を受けやすく、有機質肥料が病気の発生源になる場合もあって、ときにコントロールが難しいものです。その点、品質が安定していて濃度などを人の手で簡単に調節できる化学肥料は使いやすいと言えます。
 両者の持つ特性をよく理解して、欠点を補いあうことが重要です。

化学肥料のいろいろ

 化学肥料の代表的なものには、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリウム質肥料、石灰質肥料などがあります。次に、ひとつひとつ見ていきましょう。

◎窒素質肥料

 窒素を主成分とする化学肥料です。代表的なものを2つ紹介します。

a. 硫安(硫酸アンモニア)
 真っ白な結晶で水に溶けやすく、速効性化学的に酸性生理的酸性肥料です。肥料成分は最低でも20.5%が保証されています。よく効くいい肥料なのですが、反面、窒素過剰になりやすいので控えめに使うのがコツです。使い続けると土壌が強酸性になるので石灰などアルカリ分の補給と、堆肥を使って地力を落ちさせない努力がいります。

b. 尿素
  白い細かな、またはザラメ糖のような粗い粒の結晶で水に溶けやすく、速効性ですが硫安と比べるとやや遅い化学的に中性生理的にも中性肥料です。肥料成分は最低でも43%が保証されています。ビウレットという植物にとって有害な成分をわずかに(1%以下)含んでいます。実害はほとんど無いのですが、芽生えの頃に根が触れると白化症状を起こすことがあるので、元肥として施す場合は間土(肥料の上に土を数cm?10cmほど被せること)を充分に。ガス害(亜硝酸ガスが発生する場合がたまにあるため)のおそれがあるので、ハウスなど閉鎖環境では使用を控えた方が安全でしょう。

 このほかにも殺菌・殺虫、除草剤として効果があるも人体にも有毒な石灰窒素や、爆発性のある硝安(硝酸アンモニウム)などがあります。どちらも良い肥料で、適切に取り扱えば何の問題もありませんが、知らないと危険なので名前のみとします。

◎リン酸質肥料

a. 過リン酸石灰(過石)
 茶色の酸っぱい臭いのする粉末で水に溶け、速効性ですが効果が多少長もちします。化学的にも生理的にも酸性の肥料で、可溶性(水に溶けるが溶けにくい)リン酸15%、水溶性(水によく溶ける)リン酸13%が最低限保証されています。よく似た名前の重過リン酸石灰と言うのがありますが、これは過リン酸石灰で可溶性リン酸30%、水溶性リン酸28%あるものをそう呼んでいて、本質的には同じものです。面白いことに気温の低い時によく効く肥料として知られていて、寒肥にお勧めです。アルカリ土壌の改善効果もある反面、アルカリ性の肥料と併用すると肥料としての効果が薄れます。元肥としての利用が推奨されていますが、追肥に使えないわけではないです。

b. 熔成リン肥(熔リン)
 濃い灰色か淡い緑色の細かな砂のような粉末で、水には溶けない緩効性の肥料です。化学的に弱アルカリ性、生理的にアルカリ性の肥料です。水には溶けませんがクエン酸には溶け(ク溶性といいます)、このク溶性リン酸が最低でも17%含まれています。実際にはク溶性リン酸20%前後、副成分としてク溶性マグネシウム15〜18%、アルカリ分40%、可溶性ケイ酸20%を含み、マンガンやホウ素などの微量元素も入っているなかなか優秀な肥料です。ク溶性の成分は植物の根に触れることではじめて吸収できる形になるので、雨などによる損失が極めて少ない肥料と言えるでしょう。アルカリ分を豊富に含んでいますから酸性土壌の改善に効果がありますが、とにかく水には溶けないので元肥としてあらかじめ施す必要があります。

 このほかにもリン鉱石(石油より貴重な天然資源)をそのまま砕いて粉にしたものとか、焼成リン肥(焼リン;複合肥料の原料のひとつ)などがありますが、普通のお店では単体であまり見かけないものなので省略します。

◎カリウム質肥料

a. 塩化カリ
 ふつう白い結晶で、水によく溶ける速効性の肥料です。化学的性質は中性、生理的性質は酸性です。水溶性のカリウム50%が最低量として保証されています。元肥にも追肥にも使うことのできる便利な良い肥料ですが、酸性が強いので石灰との併用が推奨されています。また湿気りやすいので保存する場所に気を付けてください。もうひとつ、デンプン質の作物、特にいも類には悪影響(いものデンプン値が下がる)が知られているので避けてください。その理由はよく分かっていません。しかし有害な成分があるのではなく、肥料に含まれている塩素が持つ繊維質の合成を促す働きによって、糖が繊維の発達に使われてしまうためにイモにまわらなくなるのだと考えられています。

b. 硫酸カリ
 うすい灰色の細かい結晶で、水によく溶ける速効性の肥料です。化学的性質は中性、生理的性質は酸性です。水溶性のカリウム45%が最低量として保証されています。塩化カリ同様、石灰との併用が推奨されています。塩化カリと違っていも類などへの悪影響はありません
 
 このほかにもマグネシウムを含んだ硫酸カリ苦土が果樹や野菜用に使われ、化学的・生理的アルカリ性で土壌に与える影響の小さい重炭酸カリなどが利用されています。

◎石灰質肥料

 石灰質肥料は土壌pHの調整など、単独で使うことの多い肥料のひとつです。それだけいろいろなものがあって、性質も少しずつ違います。当然ながらすべて化学的にも生理的にもアルカリ性の肥料です。アルカリ分の多いものほど与える量は少なくて済む反面、障害が起こるおそれも高くなります
 生石灰(アルカリ分80%以上)、消石灰(アルカリ分60%以上)、苦土石灰(アルカリ分53%以上)、カキガラ(アルカリ分40%)が代表的なところでしょうか。どれも植えつけの2週間前には施しておきたいものです。
 生石灰消石灰速効性で、土壌消毒や除草(無差別に効果が及びます)にも効果があります。そのかわり植物にも障害が出やすいものです。
 苦土石灰カキガラ遅効性で、消毒の効果もありませんが植物に障害が出ません
 家庭園芸では他の植物との間に撒くことも多いでしょうから、苦土石灰やカキガラのほうが安心して使えるでしょう。

 このほかにも単体で利用される肥料は多くあるのですが、家庭園芸では使う機会はほとんど無いでしょうから、省略します。

 


空気から無尽蔵にとれる窒素と違って、リン鉱石やカリ鉱石はすべて輸入品のうえ、埋蔵量の少ない大変貴重な資源です。化学肥料もまた、自然界にある天然のものから作られるのです。錬金術のように無からみ出されるものではありません



無機肥料(とくに化学肥料)の良さはいろいろありますが、労力の軽減がいちばん大きな効果だったかも知れません。有機質肥料は一度に大量に与えると弊害が大きいので、こまめに与えるしかなく労力が大だったのですが、化学肥料なら少ない回数で効果をあげることができます(だから、与え過ぎてしまいがちなのですが)




成肥料の多くは主成分が直接溶けて、植物に吸収されるものが多いのですが、まったく微生物が関与しないわけではありません。緩効性の窒素肥料などでは尿素分解菌や硝酸・亜硝酸菌と呼ばれる細菌類によって主成分が分解されて、肥料の効果が表れます。ただその過程は有機質肥料の場合と比べて極めて単純なものです
   


肥料の組み合わせ 「植物栄養・肥料学(朝倉書店)」より抜粋・改変

  肥料の種類
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1
硫安・過リン酸石灰・重過リン酸石灰・複合肥料(酸性)
-
×
×
2
石灰窒素・混合窒素肥料・重炭酸カリ
×
-
×
×
3
尿素
-
4
硝安
×
-
×
×
×
5
熔成リン肥・焼成リン肥・骨粉類・アルカリ性複合肥料
×
-
6
消石灰・生石灰・草木灰
×
×
-
×
7
硫酸カリ・塩化カリ・硫酸カリ苦土
-
8
苦土過リン酸(※1)・混合リン肥(溶過リン・重焼リン)
×
×
-
9
ホウ酸肥料・ホウ酸塩肥料(※2)・IB窒素(※3)
-
10
魚肥・植物油かす・その他の有機質肥料・堆きゅう肥(完熟)
×
-


表の見方

縦列、横列とも、同じ数字は同じ肥料を表しています。
つまり横列1-縦列2という組み合わせは、「硫安・過リン酸石灰・重過リン酸石灰・複合肥料(酸性)」と「石灰窒素・混合窒素肥料・重炭酸カリ」との組み合わせを表します。

○は混ぜてOK!いい組み合わせ。
△は混ぜても問題ないけれども、使いにくくなる組み合わせ。
▲は混ぜると化学変化が起こり、無駄が生じるので良くない。
×は混ぜちゃダメ。有害だったり、無効化だったり。
表にありませんが、大豆カスと尿素は混ぜてはいけません。

(※1)苦土過リン酸はリン酸肥料の一種。マグネシウムなども含む。
(※2)ホウ酸肥料・ホウ酸塩肥料はホウ素肥料の代表的なもの。
(※3)IB窒素は緩効性窒素肥料の一種。イソブチルアルデヒド縮合尿素窒素肥料の略。

 

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